まずは下の写真をご覧ください。
蛍光灯下黒背景
これは現在日本の歯科医院で最も使用されている歯の色の見本ビタ・シェードと呼ばれるものですが、通常の配
列ではなくホワイトニング時の基本となる明るさの順に並べ替えてあります。左から右に向かうにつれて色が濃くな ります。日本人の歯の色は丁度この中の真ん中ぐらいの色の歯が多いのです。
ホワイトニングを行なうことにより徐々に左の方の色に移動するわけですが写真で見ると左端の色でも黒っぽく
見えるかと思います。しかし口の中で見ると左端の色はかなり白く、実際に人工の被せ物を作る時にはめったに使 いません。つまり患者さんの他の歯の色に合わせて被せ物の色を選ぶ場合これ以上白い歯は必要ないとい うことです。
それらをふまえて下の写真をご覧ください。
蛍光灯下白背景
コピー用紙をバックにして撮った同じビタ・シェードの写真ですが上の黒バックの写真と比べるとかなり黄色く感じる
かと思います。左端の一番白い歯でもコピー用紙と比べるとかなり色が濃く見えます。
この2枚の写真を比べてわかることは周囲が黒いほど歯は白く見えるということで、すなわち顔が日焼けして黒
い人の方が歯が白く見えるのです。
ホワイトコート色見本黒背景
ホワイトコート色見本白背景
上の見本の写真はコピー用紙の白とかなり近い白になっています。しかしながらこの中でOB0とOB1は歯の色と
しては白すぎると思われますので、継続的に使用する被せ物にこのような色を用いるのはお勧めできません。この ような色は例えば純白のウエディングドレスを着る結婚式や白い服を着てテレビに出るとか人前に出る等の特殊 なシチュエーションでのみ一時的に使用するべきと考えます。(この写真の中でEnamelという色も白く見えますが実 際の歯にコーティングした場合半透明色なので元の歯の色に近い色になります。)
テレビ等で見かける芸能人で極端に歯の白い方がいますが、あまり極端に白くても大変不自然な感じになっ
て作り物の歯と分かってしまいます。あまり白いと作り物の歯と分かってしまうわけです。また作り物の歯は天然 の歯に比べて透明感が劣るものが多いため光の当たる角度によっては、たとえ色を合わせて作ったものでも作り 物の歯の方が白く見えてしまうこともあります。このことを含めて、いくら白い歯になりたいからといって自然な歯の 色の範囲を超えてそれ以上なり被せるなりすることはとてもお勧めできるものではありません。
ここで光の種類による歯の色の見え方を比べてみます。なお蛍光灯下で写真を撮ると緑色に、直射日光下では
黄色に、日陰では青色に色かぶりしてしまいますがその色かぶりの部分はここの写真では補正してあります。
直射日光白背景
直射日光下の上の写真は光の向きが悪く歯の部分が影になってしまい、歯の色がよく分かりません。真上から
日が当たっていればもう少しはっきりした色の違いが分かる写真が撮れたかと思います。しかし歯には湾曲があり ますのでたとえ真上から日が当たっても周辺に強い影ができてしまいますので全体として歯が黒っぽく見えますし 色の違いが分かりにくいかと思います。
日陰白背景
上の写真のように日陰で見ると歯の色の違いがはっきり判断できます。これは強い影ができないということと
光の反射で歯の表面が強く光ってしまうことがないため、歯に湾曲があっても全体に光が回り均一な色を確認でき ます。実生活で口の中の歯を他人が見た場合はこの状態が最も多いと思われますので、歯科医院では通常 この状態で歯の色を合わせます。歯科のユニットに付いている無影灯はこの状態に近くなるよう作られており影が 出にくくなっています。
ブラックライト黒背景
ブラックライト白背景
上の2枚の写真は特殊なシチュエーションになりますがブラックライトを光源にした場合のビタ・シェードの写真で
す。最近では飲食店などでこのような照明を使われているところもありブラックライトの照明を目にする機会も増え てまいりました。ご覧の通り黒をバックにするとかなり歯の白さが目立ちます。また歯の色は右側の方が濃い色の はずですがどれも同じ色に見えます。これはこのビタ・シェードの材質が同じためと思われますが天然の歯の場合 反射率の関係でもう少し黒っぽく見えるかもしれません。
このように光の状態により歯の色の見え方は大きく異なります。作り物の歯と天然の歯は反射率、透明度が異な
りますので以前はきちんと合わせて作っても光の状態によって隣の歯と色が大きく違ってしまうということがありま したが、現在は材料も改善されてきていますのでそのような違いが出ないようになってきてはいますがまだ完全に 同一にはできていません。今後さらに改善されてどのようなシチュエーションでも色の違いが出ないような材料が開 発されることと思います。
ここまでは歯の色が全体に均一であるという前提により話を進めてまいりました。しかし1本の歯の各部分によ
っても色が違うのです。上の写真は人工歯ではありますがおおまかに色の濃い方から順に歯頸部色(歯の根元 の歯肉に近い部分)、歯冠色(歯の中心部)、切端色(歯の先の部分)の3つに分けられます。この中で切端色とい うのは透明に近い色になります。この透明感は前歯の被せ物を自然な感じに見せるのに非常に重要な役割をしま す。
実際に歯科技工士が前歯の被せ物を作る場合、単純に1色で歯を作り上げるわけではなく何重にも色を盛り上
げて非常に手間を掛けて作っています。まず元になる歯の色や金属の芯の色を隠すためのオペーク色、次に作り 上げる被せ物の色の基準となるデンティン色、根元の濃い色を出すためのサービカル色、次に歯の透明感や歯 の先の色を出すためのエナメル色、場合によってはより自然感を出すためにわざと汚れを付けるステイン色等を 盛る場合もあります。また各層の厚みや幅によっても色は変化します。
このように歯科の被せ物は、より天然の歯の色に近付くよう様々な工夫がなされています。皆様もこの機会にご
自分の歯を鏡で観察して歯の色について再認識されてはいかがでしょうか。
前歯の被せ物の断面図
※このページに掲載しております写真の歯の色はご覧になられている環境により色の濃さや色味が異なりますので、実際の色と
異なる場合がありますのでご了承ください。
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