mem

歯周病。歯石

Q:バイオフィルムとは何ですか?

A:最近、歯周病の原因としてバイオフィルムが注目されています。即ち歯周病はバイオフィル
  ム感染症であるというものです。
   バイオフィルム(生物膜)は細菌の集合体がその細菌の排泄物に囲まれたものでスライム
  状を呈します。具体的には風呂の水垢や排水管のぬめり等がわかりやすいかと思います。
  その他歯垢、コンタクトレンズ表面のぬめり等も細菌の種類こそ違いますがバイオフィルム
  です。
   最近各社より発売されている超音波歯ブラシはそのバイオフィルムを強力に除去します。
  しかもブラシの先が当たっていない部分1cm位離れている部分のバイオフィルムも除去可能
  です。従ってブラシの届かない歯間部や歯周ポケットの中まで清掃可能であるため超音波歯
  ブラシは歯周病の患者さんに適していると言われています。

Q:歯石はどうして取らなければならないのですか?

A:歯石は、歯垢と呼ばれる食べカスや細菌の塊が唾液中のカルシウムやリン等により固まっ
  たものです。歯石の刺激によって歯肉が炎症を起こします。さらに歯と歯肉の間に入り込ん
  で歯と歯肉が密着しているのを引き剥がし歯と歯肉の 間にある溝(歯肉溝)がどんどん深く
  なっていきます(歯周ポケット)。その歯周ポケットは細菌の温床になり、さらに歯肉の炎症
  が悪化しポケット内部から膿が出てくるようになります。同時に歯を支えている歯槽骨も吸
  収して根が露出してきます。このように歯石は歯周病の一番の原因とされているのです。
  個人差はありますが通常半年に一度、歯石が付きやすい方では3ヶ月に一度くらいは歯石
  を取っておいた方が良いでしょう。目で見て付いていないからと安心はできません。歯周ポ
  ケットの中に付着している歯石(縁下歯石)は直接見ても見えません。ちなみに縁下歯石に
  対して直接目に見える歯石を縁上歯石と呼びます。

超音波スケーラー

Q:歯石を取った後に歯がしみるようになったのですが

A:歯石がかなり付着している方ですと歯石を取った後に冷たい物がしみたり、息を吸った際に
  しみたりする場合があります。これは歯の周りを覆っていた歯石を取ることにより歯が裸の
  状態になり外界の様々な刺激に直接接触するためと、歯肉の退縮により歯の根が露出
  して歯がしみやすい状態になっていたにもかかわらず歯石の存在によりそのしみる症状が
  出ていなかったのが歯石を取ることにより顕在化したためと考えられます。何れの場合も
  一時的なもので1〜2週間で落ち着きますので心配はいりません。しかしひどくしみる場合や
  長期間しみるのが改善しない場合は歯科医院で知覚過敏処置をしてもらうか知覚過敏予
  防の歯磨剤を使用するとよいでしょう。

Q:歯周病と歯槽膿漏はどう違うのですか?

A:歯槽膿漏は歯周病の一種です。歯周病は大きく歯肉炎と歯周炎に分けられます。歯肉炎
  歯肉表面付近の炎症で歯槽骨には及んでいないもので、未成年の方の歯肉の炎症は殆ど
  がこのタイプになります。それに対して歯周炎は正式には慢性辺縁性歯周炎と呼ばれ歯槽
  膿漏はこちらに属します。炎症が歯槽骨にまで及んでいるもので歯槽骨の吸収(歯の周りの
  骨がなくなってしまう)を伴います。成人が歯を失う原因の半数以上はこの歯周炎によるもの
  と言われています。
   下図において1〜2が歯肉炎の段階、3以降が歯周炎と言えば分かり易いかもしれません。
  歯肉の一番上の部分(歯肉縁)より上にある歯石は縁上歯石と呼ばれ皆様ご自身で鏡など
  を見て確認することが出来ます。それに対し歯肉縁より下にある歯石は縁下歯石と呼ばれ
  初期段階でご自身にて確認することは難しいと思われます。この縁下歯石が歯周炎に於い
  て最も重大な害を及ぼすものと言われています。図の2〜3の段階で縁下歯石が付着し始め
  ると歯と歯肉が密着していた(上皮付着)のが剥がれて歯周ポケットを形成します。同時に
  歯槽骨も吸収して歯肉も痩せて次第に歯もぐらついてきます。図の4の段階になると縁下歯
  石は皆様ご自身でも確認することが出来ます。一般的に縁下歯石は縁上歯石に比べ硬く色
  も黒っぽく含まれる細菌も異なります。

(株)ナルコーム 文例達人2よりイラスト一部転載

Q:歯石は1回で全部取れませんか?

A:歯石を取ることをスケーリングと言いますが一般の保険治療を行なっている歯科医院では歯周
  病の治療の一環としてスケーリングを行なっています。歯を白く綺麗に見せるためにスケーリン
  グを行なっているわけではないのです。そのような目的ですと美容的審美的な治療ということに
  なりますので保険治療の範囲を逸脱してしまうのです。自費治療で歯石を取り歯を綺麗にする
  治療はスケーリングでなくクリーニングと呼ばれる場合もあります。結果的にはどちらも歯は綺
  麗になりますし同じ内容の治療である場合もありますが臨床的な目的が異なっているのです。
  歯肉が炎症を起こしている場合には歯石を取った後に歯肉がどの程度改善しているかも確認
  しなければいけませんし治りが悪い場合はまたさらにもう一度スケーリングまたは次の段階の
  治療に移行しなければならない場合もあります。また歯石を取ることにより歯肉から出血したり
  しますから出血面積が広いとかえって細菌が入って腫れたりしばらく歯がしみたりしますので一
  度に全部の歯の歯石を取ってしまうと患者さん自身に苦痛を与える危険性もありますので、通
  常は数回に分けて歯石を取ることになります。
   もちろん残っている歯が数本しかないとか歯肉の炎症も殆どなく歯石もあまり付着していない
  場合等では1回で済む場合もありますし逆に歯肉の炎症の程度によっては歯石を取るだけで6
  回も通院して頂かなければならない場合もあります。
   歯周病の治療としてのスケーリングはこのように1回歯石を取って終了というわけにはなかな
  かいかないわけです。
   また例えば初診で通院回数1回で28歯全部スケーリングして保険請求したとしますと歯周病の
  治療として不適切ということで審査で否認される場合が殆どです。
   自費治療としてのクリーニングであれば歯を綺麗にするのだけが目的ですからこのような制約
  はありませんから治療費が高くはなりますが1回で歯石を取ることは物理的には可能です。しか
  し前述の通りの苦痛を伴う危険性もありますし一定時間内に取らなければならないために完全
  に取りきれない場合も生じる可能性もありますのであまりお勧めできません。



戻る

HOME