歯科治療の知識

 この項では当院で行なっている治療の手順を治療方法別にご紹介いたします。当院ではできるだけ治療の度
に今現在行なっていることを説明するようにはしていますが時間の関係で完全に説明しきれない場合も多々あり
ます。歯科医院で治療を受ける際、椅子を倒して寝た状態のまま次は何をされるんだろうと不安に思ったことは
ありませんか?ここではそのような不安をなくすために治療の手順を説明いたします。
 なおあくまで当院の治療であって他院での治療にはあてはまらない部分があるかと思いますのでその点はご了
承願います。また標準的な治療手順を示していますので虫歯の大きさや症状によって省略あるいは追加される作
業がありますのでこちらもご了承願います。

初診のときの治療

 初めて当院を受診される際やしばらく期間を空けての来院の場際の処置については別ページの初めて当院を受
診される方へをご覧ください。

歯石を取る治療

 歯石を取る治療のことをスケーリングと言いますが20歳以上で歯科治療を受けたことのある方なら殆どの方が
受けたことがある治療ではないかと思いますが、通常は超音波スケーラーという機械を用いて行ないます。そして
細かいところや歯周ポケットの奥の方の歯石は手用スケーラーという器具を用います。
 よく患者さんでも間違えられる方がいらっしゃるのですが超音波スケーラーで歯を削っているわけではありませ
ん、。歯に付着している歯石に超音波スケーラーのチップ先端を当てて超音波振動を与えることにより歯石の塊を
破壊し歯面から剥がしているわけです。また歯に強固に付着してる歯垢などもバイオフィルムを破壊して同様に剥
がします。
 歯石を取ることにより歯肉から出血したり一時的に歯がしみたりしますので一度に全部の歯の歯石を取ることは
難しく、また歯肉が炎症を起こしている場合には歯石を取った後に歯肉がどの程度改善しているかも確認しなけれ
ばいけませんので通常は数回に分けて歯石を取ることになります。
 治療の流れは以下のようになります。

超音波スケーラーを用いて歯石を除去します


必要があれば手用スケーラーを用います


歯と歯の間のところが緊密で器具が入らない場合は研磨用のストリップスで磨きます


若干の取り残しにより表面がざらつきますので研磨剤で磨きます


最後に消毒薬で消毒します


プラスチックを詰める治療

 コンポジットレジン充填と呼ばれ歯と同じ色の詰め物をする治療で通常1回で治療が完了します。ただ虫歯が深
かったり痛みなどの症状があった場合セメントを詰めて1回様子を見てから詰める場合もあります。主に前歯や奥
歯でも虫歯の面積が小さい場合に詰めることができます。しかし金属ほどの強度がありませんので虫歯が広範囲
にわたる場合などはこの治療法では無理ですので他の治療法を選択しなければなりません。
 十数年前までは2つのペーストを混ぜて固まらせる方式が主流でしたが現在は光を当てて硬化させる光重合方
式が主流になり硬化を待つ時間がかなり短縮されました。さらに当院ではプラズマ照射器という強力な光を出す装
置を使用していますので従来30〜40秒光を当て続けなければならなかったのが5〜10秒で済むようになりました。
治療の流れは以下のようになります。

虫歯のところを削ります(深い場合や知覚過敏がある場合は予め麻酔をする場合があります)

深い場合は専用のセメントなどで裏層します

エアで乾燥後、歯面と充填するレジンとのなじみを良くするためのフプライマーと呼ばれる液を塗布します


エアで乾燥後、歯面とレジンを接着するボンディング液を塗布し光を照射します


レジンを削った穴に詰めて光を照射します


虫歯の深さにより一度に詰めきれなかった場合はさらに詰めて光を照射します

余剰部分を削り表面を磨きます

歯と歯の間の部分を詰めている場合はストリップスと呼ばれるテープで間を磨きます

金属を詰めるまたは被せる治療

 金属はプラスチックに比べ強度がありどのような歯や虫歯の形にも対応できるため保険治療では現在でも主流
となる治療法です。当院で用いている保険適用の金属は金パラジウム銀合金と呼ばれ金12%パラジウム20%銀46.
4%%銅18.8%残りイリジウム、亜鉛等となっています。
 通常この治療は治療回数2回となり1回目に削って型を採り2回目に歯を入れるという流れになりますが虫歯が深
かったり痛みなどの症状があった場合セメントを詰めて1回様子を見てから削る場合もあります。
治療の流れは以下のようになります。

1日目
虫歯のところを削ります(深い場合や知覚過敏がある場合は予め麻酔をする場合があります)

深い場合は専用のセメントなどで裏層します

神経が生きている歯の場合削った面に知覚過敏防止薬を塗布します(ちょっと辛いです)

歯の状態により噛み合わせを見るために熱で軟化した蝋(ワックス)を咬んでもらい反対側の歯の型を採ります

エアなどで乾燥後削った部分に加熱した寒天印象材を流し込みます(ちょっと熱いです)

すぐにトレーに盛ったアルジネート印象材を歯に圧接します(ちょっと冷たいです)

1〜2分経過後にトレーを外します

削ったところに仮の詰め物などをします
2日目
仮の詰め物や仮歯を外し前回削ったところを消毒します

型を採った日から日数が経過し歯が移動していますので試しに歯を入れてみて適合状態を確認します

適合や噛み合わせを調整するためにできた金属の歯を削ります

上下の噛み合わせのバランスが悪い場合反対側の歯を削る場合もあります

問題なければセメントを練ります

削った面をエアなどで乾燥しセメントを入れ金属の歯をセットします

余剰のセメントを器具を用いて除去します

セメントの硬化を待つため暫く綿を咬んでいてもらいます

最終的な噛み合わせのチェックをし必要があれば削って調整します

 この2日の間に院内技工または外注の技工所で金属の歯を作ることになるわけですが患者さんはできた状態し
か見ることはできません。実際にはかなりの行程を経てようやく完成しますのでそれなりに日数が掛かりますので
明日までに歯を入れて欲しいと言われても無理なわけです。金属の歯ができるまでの行程もこちらに掲載しておき
ます。
採った型に石膏を流して模型を作ります

模型で噛み合わせを再現するために咬合器という機械に装着します


蝋(ワックス)で歯の形を作ります(全て手作業で蝋を盛り上げて彫刻して形を作ります)


蝋の型を埋没材と呼ばれる専用の石膏に埋め込み鋳型を作ります


硬化後高温(650〜700℃)の炉に入れて蝋を蒸発させます


金属を溶かして(920℃)鋳型に流し込みます


流し込んだ金属を鋳型から取り出しきれいにします


余剰の金属を切断し研磨します


咬合器にセットして噛み合わせを調整して最終研磨をおこないます



神経を取る治療

 虫歯が深い場合や歯の中の神経が炎症を起こして痛みが取れない場合は、麻酔をして神経(歯髄)を取ること
になります。その際虫歯の部分を削るのはもちろんのこと神経を取るための器具を入れるために歯のてっぺんか
ら大きく穴を開けなければなりません。その穴が小さすぎると神経が完全に取りきれなかったりします。
 神経の治療が終わりましたら神経のあったところを空洞のまま蓋をするのではなく空洞部分をガッタパーチャー
と呼ばれるゴム状の材料やセメントなどで完全に埋めてしまいます(根管充填)。
 ここではわかりやすくするため3回の治療で説明していますが症状や歯の状態によっては1回で終わる場合もあ
りますしここで説明している2日目の治療を何回も続けなければならない場合もあります。

1日目
必要があれば笑気、表面麻酔などをします。

麻酔(注射)をしてうがいをしてもらい、麻酔が効くまで待っていただきます。


虫歯の部分及び神経を取るのに必要な部分を削ります。この場合麻酔があまり効いていないようでしたら申し出て
いただけば麻酔を追加いたします。

リーマー、ファイルという器財を用いて神経を取ると同時に神経のあった細い管(根管)を拡大していきます。

図は「歯科こだわり素材」より転載

症状にあわせて薬を浸した綿を詰め蓋をします。このとき炎症がひどい場合には蓋をしないで穴を開けたまま帰
宅していただく場合もあります。


2日目

前回蓋をしてある場合は蓋と綿をを外して消毒薬で洗浄します。

前回同様リーマー、ファイルを用いて根管を拡大すると同時に血液や膿の固まり等を取り除いてきれいな状態にし
ます。

洗浄が必要な状態なら薬液で洗浄します。

前回同様、症状にあわせて薬を浸した綿を詰め蓋をします。このとき炎症がひどい場合には蓋をしないで穴を開
けたまま帰宅していただく場合もあります。

3日目

前回蓋をしてある場合は蓋と綿をを外して必要があれば消毒薬で洗浄します。

前回同様リーマー、ファイルを用いて根管を拡大すると同時に血液や膿の固まり等を取り除いてきれいな状態にし
ます。

外部から根の先にばい菌が入らないように根管内をガッタパーチャーまたはセメントで充填し空洞を埋めてしまい
ます(根管充填)。


歯質の残りが少なく金属で補うまたは補強する必要があれば削ってから金属の芯(メタルコア)を作るための型を
採ります。それ以外の場合はセメントまたはプラスチック(レジン)で蓋をしてしまいます。

きちんと空洞が埋められているかどうかレントゲンで確認します(妊娠されている方以外)。

※神経の治療自体はここまでで終了となりますが、この後歯の機能を回復するために被せたり、詰め物をしたりす
る必要があります。

根の治療

 すでに神経を取ってある歯または神経が死んでいる歯で、根の先が炎症を起こしたり根の先までばい菌が入っ
ていると思われる歯は根の治療をする必要があります。すでに被せ物が取れて穴が開いている歯の場合はすぐに
根の治療を開始することができますが、多くの場合金属の芯や被せ物が入った状態のまま炎症を起こしています
のでこれらを取り除かなければなりません。これらは簡単に取れることは稀で取るのにかなりの時間を要すること
が殆どです。器械を使って外すことができない場合は削り取ることになります。金属を削るのは歯を削るよりも何
倍も時間がかかります。さらに根管充填をされている場合はその詰め物も取り除かなければなりません。これらを
取り除いてようやく根の治療ができる状態になります。

図は「歯科こだわり素材」より転載

1日目
被せ物や金属の芯などを取り除き、虫歯の部分を削ります。

根の先まで詰め物(根管充填材)がしてある場合はそれをバー(回転切削器具)またはリーマー、ファイルなどで取
り除きます。

さらにリーマー、ファイルを用いて根管を拡大すると同時に残った根管充填材や血液、膿の固まり等を取り除いて
きれいな状態にします。

洗浄が必要な状態なら薬液で洗浄します。

症状にあわせて薬を浸した綿を詰め蓋をします。このとき炎症がひどい場合には蓋をしないで穴を開けたまま帰
宅していただく場合もあります。

2日目以降は神経を取る治療の2日目以降と同様の治療になります。一般的に神経を取る治療よりも治療回数は
かかります。これは根の先にばい菌が入っていたり炎症を起こしていたりするためで場合によっては根の治療だ
けで数ヶ月かかることもあります。



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